押え(おさえ)は、コンクリートの表面を鏝で締めて、強度と平滑さを出す仕上げ工程です。手順自体は単純ですが、「いつ押えるか」の判断が難しく、職人の経験が最も表れる作業と言われます。
押えは何をしている作業か
押えは、表面をなでて綺麗にしているように見えますが、実際に起きているのは表層の緻密化です。
鏝で圧をかけることで、表面近くの骨材とセメントペーストの隙間が詰まり、空隙の少ない層ができます。この層が緻密であるほど、摩耗に強く、粉塵が出にくく、汚れが染み込みにくい床になります。
倉庫床や駐車場のように、コンクリート面がそのまま使用面になる現場では、押えの品質がそのまま床の寿命に影響します。
三段階に分ける理由
押えは一度で終わりません。コンクリートの硬化が進むのに合わせて、時間を置きながら複数回押えます。
粗押えは、まだ軟らかい段階で骨材を沈め、面を整える最初の押えです。木鏝や機械ごてを使います。
中押えは、硬化が進んだ段階で再度押え、表面をさらに締めます。
仕上げ押えは、金鏝で最終的な平滑さと光沢を出す工程です。
回数を減らして手早く済ませることもできますが、その分だけ表層の緻密さは落ちます。三段階は手間ではなく、必要な工程として組まれています。
待つべきタイミング:ブリーディング水
打設後、コンクリート内部の余剰水が表面に浮き上がってきます。これがブリーディングです。
この水が表面にある状態で押えを始めると、水を表層に練り込むことになります。結果として表層だけ水セメント比が高くなり、強度の低い層ができてしまいます。
仕上がった床が白く粉を吹く、歩くと表面が削れるといった不具合は、この段階に原因があることが少なくありません。
待ち時間は気温・湿度・風・日照で変わります。夏場の炎天下では短時間で押えの適期が来て、逆に冬場や日陰では夜まで待つこともあります。時計ではなく、面の状態を見て判断します。
散水してはいけない理由
硬化が進むと鏝が重くなり、作業が大変になります。ここで表面に水を撒くと、鏝は驚くほど軽く滑るようになります。
しかし、これはブリーディング水を巻き込むのと同じことが起きています。表層の水セメント比が上がり、強度の低い層をわざわざつくっていることになります。
作業効率のために散水するのではなく、押えの適期に必要な手数を確保できるよう人員配置と段取りで対応するのが本来の考え方です。
広い面での難しさ
大面積の床では、押えの適期が面全体で同時には来ません。先に打った箇所から硬化が進むため、打設順に沿って押えを進めることになります。
そのため、打設計画の段階で「どの順で打ち、どの順で押えるか」まで想定しておく必要があります。機械ごての台数と投入順も、この計画の一部です。
よくある質問
押え作業が夜までかかることはありますか?
あります。コンクリートの硬化の進み方によっては、押えの適期が夕方以降になることがあります。特に気温の低い時期は待ち時間が長くなります。
金鏝仕上げと機械ごてはどう使い分けますか?
広い面積は機械ごて(トロウェル)で効率よく押え、壁際・柱まわり・出隅など機械が入らない部位は手鏝で仕上げます。最終の質感を金鏝で整えることが多くあります。
