「左官工事」という言葉は聞いたことがあっても、実際に現場で何をしているかまで知る機会は多くありません。この記事では、左官工事の定義から具体的な作業内容、施工の流れまでを順を追って説明します。
左官工事の定義
左官工事とは、建設業法上の29業種のひとつに位置づけられた専門工事で、工作物に壁土・モルタル・漆喰・プラスターなどを塗る工事を指します。材料を鏝で塗り付けて面をつくるという点が、板材を張る工事との決定的な違いです。
塗る工法(湿式工法)は、現場で材料の厚みを自由に調整できます。そのため、下地の凹凸や躯体の寸法誤差を吸収しながら、平らな面をつくり出せます。工場でつくった規格品を張る乾式工法にはない柔軟さが、左官が現場に必要とされ続けている理由です。
左官職人が現場で行う主な作業
左官の作業は、仕上げそのものだけではありません。むしろ現場では、次の工程を成立させるための「下地づくり」が仕事の大半を占めることもあります。
- 下地調整:型枠を外したコンクリート面の目違いやジャンカを、モルタルで平滑に整える
- 外壁モルタル塗り:ラス下地の上にモルタルを塗り重ね、外壁面をつくる
- 床モルタル・土間仕上げ:床面を水平に仕上げる
- 防水保護モルタル:屋上・バルコニーの防水層を保護する層を施工する
- 補修・埋め戻し:改修工事のはつり跡や設備開口部を既存面と揃えて埋める
- 意匠仕上げ:漆喰や仕上げ材を用いて、意図した質感を出す
施工工程の流れ
左官工事は、材料を一度に厚く塗るのではなく、役割の異なる層を重ねていきます。工程を飛ばすと、後から必ず不具合として表面化します。
① 下地の清掃:粉塵・レイタンス・油分を落とす。付着不良の原因の多くはここにあります。
② 吸水調整:下地が乾いていると塗った材料の水分が急激に吸われ、硬化不良を起こします。吸水調整材を塗って水引きを均一にします。
③ 下塗り:下地との付着を確保する層。厚塗りせず、全面に密着させます。
④ 中塗り:定規を当てて面の通りを出す工程。仕上がりの平滑さはここでほぼ決まります。
⑤ 上塗り・仕上げ:金鏝・木鏝・刷毛などを使い分け、指定の質感に仕上げます。
⑥ 養生:直射日光や強風による急激な乾燥はひび割れを招くため、必要に応じて保護します。
左官工事が必要になる場面
新築ではコンクリート下地の調整や外壁モルタル、屋上の保護モルタルなどで左官が入ります。改修工事では、既存面の補修や設備配管まわりの埋め戻しが中心になります。
規模の大小を問わず、「面を平らにする」「既存と揃える」という要求がある限り、左官の出番はなくなりません。
よくある質問
左官工事と塗装工事の違いは何ですか?
左官はモルタルなどの材料を厚みを持たせて塗り、面そのものをつくります。塗装は仕上がった面に塗料の膜をつくる工事で、面の形状を変えることはできません。順序としては左官が下地をつくり、その上に塗装が乗ることが多くあります。
左官工事に資格は必要ですか?
作業に就くこと自体に必須の資格はありません。技能を証明する国家検定として左官技能士があり、実務経験を積んでから受検するのが一般的です。
